【タッチング論】
Ⅰ.タッチング
タッチングとは「触れ合い」という人間の自然な本能的行為を基礎にしており、身体に触れることで受容感や安心感を与える行為のことをいう。心地良いタッチングは、香りとともに癒しを与え、アロマテラピーにおける重要な要素の一つである。皮膚へのタッチングは皮脳同根(外胚葉由来)により、神経や脳などの中枢神経へ少なからず影響を与える。
①手指を用いて触れる、さする、擦り込む(植物油等)などを通して身体に関わる行為をいう。
②一般に身体に関わる方法としてボディトリートメントやマッサージがあるが、タッチングは人に触れるという自然な行為を基礎としているために、従来の方法よりも技術的に容易であり、リラクセーションやリフレッシュなど健康の維持増進を目的として行われる。
③アロマテラピーでは、トリートメントオイルの塗布、湿布法や清拭などのトリートメントを通してクライアント(アロマテラピーの受け手)に直接触れることが多い。この触れるという行為に対してより深い意識を向けることはリラクセーション効果およびアロマテラピー効果を高めることになる。
Ⅱ.タッチングの目的
タッチングは健康の維持、増進を目的とし、具体的には次のことを目指している。
①心身の恒常性(ホメオスターシス)の維持と促進
心地よいと感じることで、その刺激が大脳辺縁系視床下部を通じ、恒常性に働きかける。
②精神的、身体的なリラクセーション、リフレッシュ効果
リラクセーションとは、心身の緊張を緩める行為や緊張がほぐれた状態をいう。副交感神経が優位になり、ストレスホルモンの分泌量が低下、免疫力の増強などが期待できる。
リフレッシュとは、気分転換を図り心身に元気を取り戻したり、気分を爽やかにしたりすることである。心と体は密接な関係にあり、精神面のリラックスやリフレッシュが肉体面にも同様の作用を引き起こすことがある。また反対に、肉体面から精神面への採用を引き起こすこともある。
③「触れ合い」という人間の本能的欲求の充足
触れ合いは人の本能的行為である。私たちは仲間同士、互いの体に触れることで、安心や受容を感じることができる。これを本能的欲求の充足という。
④心身の安定による生活の質(QOL)の向上
タッチングにより心身がより安定することで、QOLが向上する。QOLは個人の生活状況に対する主観的な評価であり、文化や価値観、個人の基準、身体の調子や心理状態、環境などが複雑に関与する。
Ⅲ.タッチングの範囲
タッチングは健康の維持、増進を目的とするサービス行為であり、医療行為(診断行為、治療行為)や医業類似行為(あん摩、マッサージ、指圧など)を目的とするものではない。
Ⅳ.タッチングの対象者とその効果
◆自分自身に触れる場合
セルフケアにおいて、トリートメントなどを行い、自分の体にゆっくり触れることでリラックスし、自分の体の状態や気持ちに気づくことができる。
・心地よさや安心感が得られる。
・手を通して身体の状態を知ることができる。
・自分に深く意識を向けることができる。
◆家族や友人などに触れる場合
タッチングにはもともと信頼関係が必要ですが、触れることでその関係がさらに深まるなどの効果がある。
・相手の気持ちを感じ取ることができる。
・相手に自分の気持ちを伝えることができる(非言語コミュニケーション)。
・相手に心地良さや安心感を与え信頼関係をもたらすことができる。
◆触れ合う場合
家族や友人と手を繋ぐなど、互いに触れ合うことで、お互いのコミュニケーションがスムーズになることが期待できる。
・互いに心地良さや安心感を得ることができる。
・コミュニケーションを円滑にすることができる。
・相手を理解し思いやることができる。
Ⅴ.タッチングの方法
タッチングに求められること
①心地よいタッチング
②丁寧に触れる
③大切に接する
④相手にとっての心地良さを優先する
・相手の感受性に合わせる。
・触れる部位、触れ方に配慮する。
⑤環境や衛生面、モラルや空間に配慮する
・モラル
次のことに注意して行う。
ⅰ説明と同意
ⅱ安心感
ⅲ信頼感
ⅳプライバシーの遵守
ⅴクライアントの意思の尊重
・衛生
①爪の手入れ
②石けん水などによる手指の洗浄
・空間
①健康的で清潔な空間でなければならない。
②常に清潔に保たなければならない。
③快適と感じられる広さ、換気、採光、温度を保たなければならない。
Ⅵ.行う部位
①健康を損なうと判断される部位には行わない。
②粘膜や損傷した皮膚、痛み、感染、炎症を伴う部位は注意して行わなければならない。
Ⅶ.適量刺激
①心地よいものであること。
②クライアントの感受性や年齢、健康状態を考慮して、心地良い刺激となるように、加える圧の強弱、行う時間の長さを加減する。
Ⅶ.アロマテラピーにおけるタッチング
アロマテラピートリートメントとタッチング
◆アロマテラピートリートメントとは
アロマテラピートリートメントとは、ボディ・フェイストリートメントにコンサルテーション、トリートメント後のアドバイスを含む行為のことをいう。
アロマテラピートリートメントの中でもタッチングは行われている。例えば、トリートメント台に受け手を誘導するとき、トリートメントの開始前にそっと触れるとき、タッチングという行為を通じて受け手には大切にされているという意識が伝わり、安心、受容を感じることができる。タッチングはアロマテラピートリートメント全体の質を上げ、受け手との信頼関係を築くと言う意味でも大切な要素である。
◆ハンドトリートメント
アロマセラピストやアロマハンドセラピストにより行われるハンドトリートメントでもアロマテラピートリートメントと同様にタッチングは大切な要素である。
【参考文献・引用元】
資格マニュアル (公社)日本アロマ環境協会
アロマテラピーインストラクター公式テキスト (公社)日本アロマ環境協会