【細胞】
Ⅰ.身体の発生
人間を含むすべての生物は「細胞」という生命をもった最小単位から成り立っている。細胞を、更に小さく分けると、「有機化合物」と呼ばれる分子になる(分子という生命活動のできない単なる物質)。細胞は生命をもつため、外界から栄養を取り込んで消化し、エネルギーに変えたり、分裂して仲間を増やしたりすることができる。
①遺伝子と受精
◆遺伝子
核の染色質に含まれ、本体はDNAでできていて、すべての細胞に含まれている。遺伝情報の基本単位で、遺伝情報の伝達や保有をつかさどっている。また、生命活動に必要な酵素やタンパク質を合成するための指令を出す遺伝コードを含んでいる。
・精子や卵子には1万個の遺伝子がある
・2重のらせん構造
・DNAとタンパク質の結合したもの
◆DNA(デオキシリボ核酸)
ハシゴがねじれたような二重らせん構造で、核内に存在し、4種類の塩基・糖(デオキシリボース)・リン酸からなるヌクレオチドを基本とする物質である。このうち、A(アデニン)・G(グアニン)・T(チミン)・C(シトシン)の4種類の塩基の配列が、暗号のように遺伝子情報を伝えることができる。
◆RNA(リボ核酸)
一本鎖構造で、4種類の塩基(A:アデニン・G:グアニン・U:ウラシル・C:シトシン)と、糖(リボース)、リン酸からなるヌクレオチドを基本単位とする物質である。細胞にとって必要な塩基配列をコピー(転写)する役割をもつ。
核やリボソーム、細胞質に存在する。
◆染色体
核内にあり、細胞が分裂するときに見えてくる糸状の構造体および染色質で、遺伝情報が記憶されたDNAがタンパク質と結びついてできている。生物の種によって染色体の数と形が決まっていて、人間は46本の染色体をもち、22対の常染色体と1対の性染色体に分かれている。男性はY染色体が弱く、Xが劣勢で血友病、色盲となり伴性劣勢遺伝がある。また、ダウン症は21対目の染色体が2本ではなく、3本あるために起こる。
◇性染色体
人間の46本の染色体のうちの2本(1対)で、女性は2本の×染色体(XX)をもち、男性は×染色体とY染色体を1本ずつもっている。
◆受精
《排卵から妊娠まで》
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卵巣内の成熟卵胞から卵子が腹腔内に放出される
※排卵された卵子は卵管に取り込まれ子宮に向かって移動する。
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卵子と精子が合体し、受精卵という1つの細胞になる
※膣内に放出された精子が子宮→卵管と移動し卵管膨大部で卵子と出会い細胞核が融合する。
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受精卵が卵管を移動して子宮内膜に定着する
※受精卵は細胞分裂を繰り返しながら子宮内膜に着床し、正常妊娠とされる。
◆胚子期
受精後8週間をさし、細胞分裂によって分化が進み、器官が形成される。
◆胎児期
受精後9週目から分娩までをさし、各臓器ができ機能し始める。
②身体の土台ができる過程 目でみるからだのメカニズムP.8参照
◆胚子期
受精後8週間をさす。最も基本的な器官の輪郭や胚子の形が作られ、この時期に外的な要因があると器官形成が妨げられ、奇形の可能性が高くなる。
◆胚葉の3つの層から由来する器官
受精後8~10日後ごろから、着床し分化が進んだ受精卵は、外胚葉・中胚葉・内胚葉の3つの細胞層(胚葉)に形成される。胚葉からはさまざまな器官が作られ、これを分化という。
3週に入ると、内胚葉→外胚葉→中胚葉の順にが出来上がる。
◇外胚葉
中枢神経(脳・脊髄)、末梢神経(自律神経)、皮膚、感覚器、副腎髄質
◇内胚葉
消化管、肝臓、膵臓などの消化器、呼吸器、甲状腺
◇中胚葉
循環器、腎臓、脾臓、生殖器、筋肉、骨、血管、リンパ管、副腎皮質
◆皮脳同根
中枢神経の一つである脳や末梢神経系の神経は、表皮や感覚器と同じ外胚葉由来の器官である。タッチングやトリートメントといった皮膚への働きかけは脳や神経の活動や精神状態に少なからず影響を与える。それは、皮膚を刺激することは、同じく外胚葉由来の脳を刺激することと同義だという考えに基づくものである。脳神経と皮膚がいずれも外胚葉より由来する器官であり、同じルーツ(根源)をもつきわめて近い存在であることからこのようにいうことがある。
③細胞の構造と機能
細胞は、細胞膜で包まれていて、その中に核がある。
細胞膜と核の間に細胞質あり、細胞質中に様々な構造物がみられ、それを細胞小器官という。
◆細胞
生物体の構造上、機能上の最小単位のこと。核膜という薄い膜の中にある核とその周りにある細胞質を包む細胞膜からできている。同じ機能を持つ細胞が集まり、組織となる。人間の身体は約60兆個の細胞から構成されている。
同じ遺伝子を持ち、核を中心として生命活動の源を作り出している。
細胞は、まわりを包む細胞膜・その中を満たす細胞質・中心となる細胞核に分かれる。
◆幹細胞
さまざまな細胞に分化する能力を持つ細胞のこと。同じ細胞を作る能力と、さらに分化して特有の機能を持つ細胞になる能力を備えている。赤血球や白血球のもとになる造血幹細胞や、皮膚細胞になる皮膚幹細胞、肝臓を作る肝幹細胞などの、さまざまな種類がある。すべての細胞に成長する可能性を持つiPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)は、再生医療の観点からも注目されている。
◆細胞質
細胞において、核と細胞膜の間にある部分の総称。細胞基質と各種の細胞小器官を含む。
◆細胞膜
細胞の外面を包み、細胞の活動に必要なものを外界から取り込んだり、不要物を排出したりする働きを持つ膜のこと。リン脂質の2層の膜から成り、膜の間には塊状のタンパク質が埋まっている。その上に突き出した糖鎖が細胞のアンテナ(受容体)としての役割を持つ。細胞のまわりを包む
◆核
核は物質代謝の制御中枢であり、細胞の遺伝情報を含む。細胞内で最も大きく、2枚の膜から成る核膜に包まれている。核膜の内部を総称して核質という。核質はDNAから成る染色質や、RNAを含む核小体、核液などから構成される。
◆原形質
細胞において、核と細胞質から成るコロイド状の部分のこと。細胞の微細構造が知られていなかった時代に、細胞の「生きている部分」を構成している物質として定義した場合の呼び方である。
◆細胞小器官
細胞内の細胞質に存在し、特定物質の産生や貯蔵、分泌に関する機能を持つ器官の総称。ミトコンドリアやリボゾーム、小胞体、ゴルジ装置、ライソゾーム、中心体などがあり、細胞内においてそれぞれ独自の機能や役割を持っている。
◇ミトコンドリア(細胞工場の発電機)
細胞小器官の一つ。糖や脂肪を利用して、細胞の生存に必要なエネルギー源となるATPを合成している。一つの細胞には、1~数千個のミトコンドリアが含まれており、ミトコンドリアの数は、その細胞において必要とされるエネルギー量によって異なる(骨格筋・心筋・肝臓・腎臓・神経などは多い)。
◆ATP
アデノシン三リン酸(Adenosine Tri Phosphate)のことで、地球上のすべての生物が共通して持つエネルギー保有物質である。エネルギーを蓄え、必要に応じてエネルギーを放出する。窒素を含む塩基(アデニン)と糖3つのリン酸基から構成される。
◇リボゾーム(細胞工場の大型工作機械)
細胞小器官の一つ。核から送られるRNA(リボ核酸)の情報に基づき、必要なタンパク質を合成している。小胞体に付着しているものと遊離しているものがある。
◇小胞体(細胞工場の輸送係)
細胞小器官の一つ。細胞内の物質や液体の輸送を行う。板状、球状、管状の閉鎖した膜構造を持ち、核や他の細胞小器官とつながっている。
◇ゴルジ装置(細胞工場の貯蔵庫)
細胞小器官の一つ。平らな袋状の構造が積み重なったような構造を持ち、分泌性タンパク質をまとめて必要箇所に送り出す働きをしている。ホルモンなどの分泌物を合成する腺細胞で発達している。
◇中心体(細胞の運動の中心)
細胞小器官の一つ。核の近くに配置され、細胞分裂時に重要な役割を果たす。一対の中心体は、核分裂時に両極を結ぶ紡錘糸を形成し、染色体の移動に関与している。
◇ライソゾーム(細胞工場の産業廃棄物処理装置)
細胞小器官の一つ。細胞が取り込んだ異物や、細胞内で生じた不要物の分解を行う。分解された物質のうち、有用なものは細胞質に吸収される。膜で包まれた小さい構造物で、多くの加水分解酵素を含んでいる。
④器官と器官系
◆組織
同じ機能や構造をもつ細胞が集まったものを組織という。細胞と細胞間質からなる。
ひとつのまとまった同じ働きをする細胞の集合によって、4つに分かれる。
◇上皮組織
身体の内外の表面を覆う、一から数十の細胞層から成る組織のこと。細胞同士が密接して配列しているため、細胞間質が極めて少なく、血管は通っていない。一層の細胞が配列してできる単層上皮や、数層の細胞が重なってできる重層上皮がある。単層上皮は摩擦に弱いが、分泌や吸収に適しており、肺胞、血管壁、胃、小腸などの組織に見られる。また、重層上皮は、上皮細胞が重なってできているために弾力性に富み、皮膚、口腔、肛門管などの組織に見られる。身体を包む保護膜の役目があり、内と外の境界線でもある。上皮組織から分化したものに分泌腺(内分泌腺、外分泌腺)がある。また、癌の発生は上皮組織にできるものである。
※図については目で見るからだのメカニズム参照P.10
◇筋組織
運動に関与する筋肉細胞の集まったもの。筋肉ともいう。細長い線維状の筋線維が集まってできた組織のこと。自分の意志で動かすことのできる随意筋である骨格筋と、自分の意志で動かすことのできない不随意筋である平滑筋と心筋に分類される。骨格筋と心筋には横紋があり、平滑筋には横紋がない。
◇支持組織
身体を支える裏方。各組織や器官を支持し、つなぎ合わせる働きをする組織のこと。細胞間質が非常に多く、細胞が埋もれるように存在する。細胞と組織を結合する役割を持っている。結合組織、軟骨組織、骨組織、血液及びリンパに大別される。
■結合組織
各組織や器官の間をつなぎ合わせる線維芽細胞や骨細胞の集まったもの。組織液、靭帯・腱・脂肪、コラーゲンなどは結合組織の仲間。
◇神経組織
情報伝達を行う細胞であるニューロン(神経元)と、神経組織を支える支持細胞であるグリア細胞(神経膠)から成る組織のこと。ニューロンを介して、細胞や組織間の情報伝達をつかさどる。脳や脊髄などの中枢神経と末梢神経は神経組織から構成される。
■中枢神経(脳・脊髄)と全身に張り巡らされた末梢神経を構成する神経細胞の集まったもの。神経ともいう。各組織の連絡役で、外からの情報を弱い電流の刺激に変えて脳に伝えたり、脳の命令を体の末端に伝える。
■嗅神経
香りの分子が粘液に溶けると、嗅覚の受容器が化学的に反応し、弱い電気信号に変えて脳におくる、など。
◆器官
様々な組織が集まり協同して一定の機能をもつものを器官という。その器官が集まって器官系を形成し、全体としての調和のとれた生命活動を営む個体が形成される。
・細胞→組織→器官→器官系(系統)→個体
◆器官系
一定の活動を行うために、数種類の器官が互いに協力して機能する集まりのこと。呼吸器系、骨格系、筋肉系、循環器系、消化器系、泌尿器系、生殖器系、内分泌系、脳神経系、感覚器系などがある。
◆個体
器官系が集まって、一つの個体が作られる。各器官系がバランスを取りながら、生命活動が営まれている。