【神経系】
Ⅱ.脳神経系
①神経細胞の構造と働き
★ニューロンとシナプス
神経系の最小単位はニューロン(神経細胞)で、細胞体とそこから出る突起からなっている。突起には、細胞体からほかに向かって遠心的に情報(電気的信号=神経インパルス)を伝える軸索と、ほかからの情報を神経細胞に向かって求心的に伝える樹状突起がある。
ニューロンには、ほかのニューロンからの軸索が連絡しており、この結合を通して情報を伝達する。結合部をシナプスといいるが、この結合部分にはシナプス間隙と呼ばれるすきまがあり、電気的信号は流れない。電気的信号が軸索の末端まで届くと、そこにあるシナプス小胞から神経伝達物質(化学的信号)が放出され、信号が伝わってきたことを次のシナプスに伝える。次のニューロンでは、神経伝達物質を受け取った場所に電位変化かおこり、電気的信号となってまた伝わっていく。シナプスは流れてきた電気的信号を化学的信号に変換してすきまをつなぎ、情報を伝達していく。
ニューロンは、ほかの多くの細胞とは異なり、生誕以後は分裂・増殖しないため、細胞体が死滅してしまえば補充されない。
ニューロンの構造
伝導
ニューロンが機能するために支える役割を果たしているのが、ニューロンの5倍以上の量がある神経膠細胞(グリア細胞)である。神経細胞とは異なり、神経膠細胞には刺激を発したり伝達する力はない。末梢神経で髄鞘を形成するシュワン細胞や、中枢神経で髄鞘を形成する希突起膠細胞などがある。
◆シナプス
神経細胞突起末端と樹状突起の間にあり、ニューロンとニューロンのつなぎ目のことである。ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質を放出する。
◆神経伝達物質
ニューロン同士の連結部位であるシナプス間で放出され、ニューロンの電気的情報を化学的に伝えるため、シナプス間で放出される物質である。興奮性または抑制性の作用をもつ。
◆カテコールアミン
アドレナリン、ノルアドレナリン、ド-パミンなどの神経伝達物質の総称。交感神経の緊張が高まるとアドレナリン、ノルアドレナリンを中心とするカテコールアミンが分泌され、心拍数上昇や冠動脈の拡張、毛細血管の収縮、血圧の上昇などの働きをする。
◆エンドルフィン
神経伝達物質の一つ。ニューロペプチドの一種で、至福感の維持に関与する。空腹感や睡眠欲、性欲などが満たされることで得られる快楽感や麻酔、鎮痛作用を示し、脳内モルヒネともいわれる。特にスポーツ時に分泌されることで得られる高揚感をランナーズハイと呼ぶ。
◆ドーパミン
神経伝達物質の一つ。興奮性の作用を持ち、運動調節やホルモン調節、快楽や意欲などの情緒的反応に関与する。アドレナリン、ノルアドレナリンの前駆体でもある。カテコールアミンの一種である。
◆セロトニン
神経伝達物質の一つ。必須アミノ酸であるトリプトファンの代謝過程で生合成され、他の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンなどの情報をコントロールする。精神を安定させる作用があるとされ、不足すると依存症やうつ病になりやすいといわれている。また、睡眠時にノンレム睡眠を引き起こす作用もある。松果体でのメラトニン合成に関与する。
②脳神経系の分類
神経系は、解剖学的および機能的に、中枢神経と末梢神経に大別され、外部の情報を集めて身体の各部位に指令を送り、全身を統制している
神経系に属する器官は、中枢神経と末梢神経に分類される。
中枢神経は脳と脊髄に末梢神経は体性神経と自律神経に分けられる。
感覚器(目、耳、鼻、舌、皮膚)が得た情報は、電気的信号(神経インパルス)として末梢神経を通じて中枢神経(脳・脊髄)へ伝わる。中枢神経はその情報を分析・判断して決定を下し、末梢神経がそれを末端の効果器(筋組織など)へと伝達する。中枢神経は中央コンピュータ、末梢神経はケーブル、全身各所にある感覚器・筋組織などは端末とイメージするとわかりやすい。
◆中枢神経
中枢神経は脳と脊髄のことで、身体のあらゆることをコントロールしている神経である。送られてきた情報を分析、判断し、決定を下す。
★脳の働き
脳は頭蓋骨で保護されており、大きく大脳、小脳、脳幹に分けられる。
※脳幹に間脳を含めて考える場合とそうでない場合とがあるが、アロマテラピー的意味を持つものとして、ここでは含める分け方をしている。
◆大脳
大脳は、左右の半球からなり、頭蓋腔の約80%を占め、間脳と中脳をおおっている。大脳の左半球(左脳)は論理的な思考の中枢で、主として身体の右半身の感覚や運動などを支配する。右半球(右脳)は創造的活動や芸術的能力に関与しており、身体の左半分の感覚や運動などを支配する。左右の半球は脳梁によって結ばれ、互いに連絡し合っている。
大脳には、神経細胞が集まっている皮質(灰白質)部分と、神経線維からなる髄質(白質)があり、灰白質は情報を処理し、白質はそれを伝達する役割を果たす。
大脳は、新皮質と古皮質に大別できる。
新皮質は、言語、判断、創造、感情など高等な精神機能をつかさどり、人間らしい理性をもって社会の中で生きるための脳である。大脳の外側の厚さ2~3mmの皮質がこれにあたり、大脳新皮質と呼ばれ、内部の髄質をおおっている。
古皮質は、怒りや喜び、不安などの本能に基づく情動行動や、食欲(個体維持)、性欲(種族保存)、記憶などをつかさどる脳である。古皮質は大脳核(大脳基底核)とともに大脳辺縁系を形成し、大脳新皮質とは異なる役割を果たすため、一般に大脳新皮質に対して大脳辺縁系という区分が行われている。
大脳辺縁系は本能行動や情動、自律機能を預かる部分で、嗅球、嗅索、扁桃体、海馬などが含まれる。特に、外部からの刺激に対して快、不快、恐怖などの情動反応をおこす扁桃体と、記憶などの情報の整理や管理を行う海馬が中心となってはたらいている。
大脳新皮質と大脳辺縁系は、大脳辺縁系での欲求や情動を大脳新皮質の知性や理性がコントロールするという形でかかわっている。
◆大脳は、決まった部位で定まったはたらきをする
大脳では、さまざまなはたらきが、それぞれ決まった部位で行われる(機能局在)。情報を識別して適する運動を指令するという一次的なはたらきは一次野が受けもつが、それには運動野、体性感覚野、視覚野、聴覚野、味覚野、嗅覚野がある。それら以外の知能、記憶、思考などの高次なはたらきは、大脳新皮質の連合野が担当する。連合野には、思考・創造・意志などのはたらきをする前頭連合野、体性感覚野に伝わった感覚情報を意味づける体性感覚連合野、聴いたものが何であるかを知る聴覚連合野、視覚野に伝わった画像信号を分析・統合する視覚連合野がある。
大脳新皮質は、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つに区分される。前頭葉は思考・判断・計算などの機能をもっており、運動野・運動前野と前頭連合野がある。頭頂葉は、身体の立体感覚をつかさどっており、体性感覚野と体性感覚連合野がある。側頭葉には感覚性言語中枢(ウェルニッケ中枢)という言葉の中枢と、聴覚野と聴覚連合野がある。後頭葉には、視覚野と視覚連合野がある。
においを識別する嗅覚野は大脳新皮質ではなく、大脳辺縁系の眼窩前頭皮質にある。視覚・聴覚・味覚・皮膚感覚などは大脳新皮質の各感覚野に伝わるが、嗅覚だけは大脳辺縁系に伝わる。
◆小脳
小脳は、運動や力の入れ具合などの身体運動のバランスを調節する。大きな指令は大脳から発せられるが、小脳はその指令を受けて実際の細かな動きを調節する。
◆脳幹
脳幹は大脳と小脳を除いた部分で、間脳、中脳、橋、延髄をさす。間脳は脳の中心部にあり、視床と視床下部からなっている。視床は、中脳・橋・延髄から伝わった情報(電気的信号=神経インパルス)を受け、大脳に伝える。
◆視床下部
視床下部は自律神経の最高中枢で、摂食行動や飲水行動、性行動、体温の調節などに関与しており、生命維持に最も重要なはたらきをする。視床下部が出す情報は延髄や脊髄へ下って自律神経系の交感神経や副交感神経に対する指令を伝える。また視床下部は、内分泌系の中枢である下垂体も支配している。このように視床下部は、自律神経系と内分泌系の2つのルートによって全身を調節する。
中脳は、間脳と橋をつなぐ部分で、視覚・聴覚情報の反射中枢や、脊髄・延髄・橋・小脳および視床と大脳のあいだで交わされる、運動・感覚に関する情報の通路である。睡眠の調節も行う。
橋は、大脳と小脳、大脳と脊髄の情報を中継する機能をもち、知覚や運動の伝導路が走っている。
延髄は脳の最下部にあり、脊髄につながっている。呼吸や循環などの生命活動の基本的なはたらきを制御している。
このように脳幹は、生命の維持に必要な機能をつかさどっている。脳幹が機能しなくなると、大脳も死んでしまう。大脳の機能が失われて脳幹だけが生きている状態が、いわゆる植物人間状態である。日本の場合、脳死は大脳、小脳、脳幹のすべてが機能しなくなった状態とされているが、脳死の定義を「脳幹の死」としている国もある。つまり、脳死では全脳死、脳幹死のいずれでも、脳幹の機能がもとの状態に戻すことが不可能な状態に停止していることが条件となっている。
★脊髄のはたらき
脊髄は、延髄から下に続く背骨の脊柱管の中を、第1~第2腰椎のところくらいまで走っている器官で、太さ10~13mm、長さ40~45cmほどで、外層が白質、中心層が灰白質である。脊髄は上から、頸髄、胸髄、腰随、仙髄に分けられる。
脊髄は、手足や体幹、内臓などの末梢から伝わった情報を中継して脳に送ったり(上行性の伝導路)、脳からの指令を中継して身体の各部に伝える(下行性の伝導路)など、情報の中継を行う。さらに、末梢からの情報を、脳の判断を待つことなく、脊髄そのものが判断して瞬時にはたらくという、脊髄反射を行う。熱いものに手をふれたときにとっさに手を引っ込めたり、転んだときに瞬間的に手が出るなどの行動は、脊髄反射によるものである。
★中枢神経の役割別分類
中枢神経である脳と脊髄を役割別に分類すると、大脳新皮質、大脳辺縁系、脳幹・脊髄系に大別できる。
大脳新皮質は、創造、適応行為、思考、言語といった、高度な知能活動を営んでおり、よりよく生きていくための脳といえる。人間の場合は、大脳新皮質が大変発達している。
大脳辺縁系は、本能および情動とその際に伴う自律反応の協調と統御に関与する。個体の生命維持と種族保存に関する重要な中枢で、たくましく生きていくための本能的な脳といえる。情動脳とも呼ばれる。
脳幹・脊髄系(間脳、中脳、橋、延髄、脊髄)は、反射・調節機能など無意識的・不随意的な機能をつかさどっている。生きていくための脳といえる。
ここで、ストレスと大脳新皮質、大脳辺縁系について考えてみる。ストレスの原因を大脳新皮質である程度分析・理解できても、なおかつストレス反応がおこるのは、ストレスを受け止めているのは「自分自身を守りたい」と考える大脳辺縁系の自己保存本能が作用しているからであると考えられる。さまざまなストレス反応は、まさに外からのストレッサーをはねのけようとする、生物としての反応なのである。
アロマテラピーが過剰なストレスの軽減に効果があるという理由は、香りの快適な刺激が大脳辺縁系を楽しませ、ストレスを軽減させるからであるが、これは鳥居鎮夫博士らの研究でも計量的に解明されている。視覚や聴覚が大脳新皮質にまず伝わるのに対し、嗅覚のみがまず大脳辺縁系(たくましく生きていくための本能的な脳)に伝わることは、精油を用いるアロマテラピーにとっては大きな意味があるといえる。
◆末梢神経
末梢神経は、体性神経と自律神経に大別される。
体性神経は、意志によってコントロ―ルできる運動神経や、痛みを感じる知覚神経のように、自分でそのはたらきをとらえることができる神経で、外部の状況を的確に知り、よりよい状況に身体の動きを保つ役割を果たしている。
自律神経は、心臓の拍動のように、自分の意志とは無関係に反射的・自動的にはたらく神経で、身体内部の状況を自動的に調節する役割を果たしている。
◇体性神経
体性神経は、構造学的にみると、脳から出ている脳神経と、脊髄から出ている脊髄神経に分けられる。
機能的にみると、末梢で得た情報を中枢に伝達する求心性の知覚神経と、それに対応する中枢からの指令を末端の骨格筋に伝達する遠心性の運動神経、また、両方の神経が混在する混合神経の3種類がある。
■脳神経 目でみるからだのメカニズムP.142参照
脳神経は脳(中枢神経)から出る12対の末梢神経で、おもに頭・頸部に分布している。
①嗅神経(知覚神経):においの感覚を嗅球に伝える。
②視神経(知覚神経):網膜に映った像を外側膝状体に伝える。
③動眼神経(運動神経):眼球を動かす。まぶたを開く。瞳孔を縮小させるなどの副交感神経線維を含む。
④滑車神経(運動神経):眼球を下外側に動かす。
⑤三叉神経(混合神経):脳神経の中で最も太く、眼神経、上顎神経、下顎神経の3つの枝からなる。顔面の知覚を脳に伝えたり、咀嚼筋に運動命令を伝える。
⑥外転神経(運動神経):眼球を外側に動かす。
⑦顔面神経(混合神経):表情筋に指令を送る。味覚を中枢に伝える。
⑧内耳神経(知覚神経):聴覚、平衡感覚の情報を中枢に伝える。
⑨舌咽神経(混合神経):舌、咽頭の知覚を伝える。味覚を伝える。咽頭の筋に指令を伝える。
⑩迷走神経(混合神経):延髄からおこる太い神経で、脳神経の中で最も広い範囲に分布する。咽頭、喉頭の知覚と運動を支配する。頸部、胸部、腹部の臓器に分布する迷走神経の枝には、副交感神経線維が混在している。
⑪副神経(運動神経):胸鎖乳突筋、僧帽筋へ運動指令を送る。
⑫舌下神経(運動神経):舌の運動をつかさどる。
■脊髄神経 目でみるからだのメカニズムP.144参照
脊髄神経は、脊髄(中枢神経)の両側に31対ある末梢神経である。構造的には、脊髄の前側(腹側)から出ている前根には運動神経線維が、反対側の脊髄の後ろ側から入る後根には知覚神経線維があり、各分節の前根と後根は合流して椎間孔から出る。椎間孔から出るとすぐに前枝と後枝に分かれ、前枝は上下の何本かの枝が合わさって神経叢を作る。
脊柱の区分によって、頸髄から出ている8対の頸神経、胸髄から出ている12対の胸神経、腰髄から出ている5対の腰神経、仙髄から出ている5対の仙骨神経、尾髄から出ている1対の尾骨神経に分けられる。頸紳経は頸部・後頭部・腕に胸神経は胸部・腹部に分布しており、胸神経の前枝を肋間神経という。腰神経は下腹部・臀部・大腿前面に、仙骨神経は臀部・大腿後面・膝から下の下肢に尾骨神経は肛門周囲・外陰部に分布している。
皮膚はすべてつながっているように見えるが、脊髄のどの部分から出ている神経にカバーされているかによって区分される。この区分を皮膚分節(デルマトーム)という。
◇自律神経
神経系による調整システムで、最もダイナミックに作用しているのが自律神経で、ホメオスターシスの維持に重要な役割を果たしている。自律神経は脳や脊髄から出て、内臓や血管、腺など自分の意志とは無関係にはたらく器官に分布し、消化、吸収、循環、代謝などの無意識的な調節、反射をつかさどっている。このように、意志の影響を受けることが少なく、自動的にはたらく神経の系統であるため、自律神経と呼ばれる。
目的器官に直行する体性神経と異なり、自律神経は中枢から出たあと必ずニューロンを交代する。この交代部位を自律神経節と呼び、情報を脳・脊髄から神経節まで伝えるニューロンを節前ニューロン、神経節から各器官に直接情報を伝えるニューロンを節後ニューロンという。
自律神経は、交感神経と副交感神経の2つの系統からなるが、この2つは拮抗的にはたらく(拮抗性支配)。ふつう、両方の神経が同時に強く興奮することはなく、一方が強いときは他方が弱められるというように、バランスをとってはたらく。臓器の多くは交感神経と副交感神経の二重支配を受けているが、末梢血管以外の大部分の血管、汗腺、立毛筋は交感神経の支配のみを受けている。
■交感神経
交感神経は、1本の節前ニューロンから、多数の節後ニューロンに接続するため、広い範囲に同時に作用する。この同時に広範囲に作用するところがまるで「交感」しているようにみえるため、交感神経という名称がついた。交感神経の中枢は、脊髄の第一胸髄から第二・三腰髄にかけてあり、脊髄を出たあとはおもに血管(特に動脈)と一緒に走り、さまざまな臓器に分布する。交感神経は、闘争、狩猟、突発的な事故に対するときなど、短い時間に全身的な機能を活性化する神経である。エネルギーを外の活動に振り向け、発散する(異化作用)場合にはたらく。
■副交感神経
副交感神経の中枢は、脳幹(視床下部)と脊髄の下方の仙髄にあり、体性神経の中を走行している。
副交感神経の神経節は、交感神経とは異なって各器官の近くにあり、一つの節前ニューロンは一つの節後ニューロンとつながって1種類の器官に作用する。このため、交感神経のように同時に広い範囲に作用することはない。副交感神経は、消耗した体力の回復をはかり、エネルギーを充電する(同化作用)場合にはたらく。意識のうえでは身体を休めているという感覚のときに作用している神経であるが、身体自体は同化作用のためにはたらいている。消化管の蠕動運動は促進され、肝臓ではグリコーゲンの合成がおこっている。
◆自律神経の伝達物質
自律神経が各臓器にはたらきかけるとき、交感神経からはカテコールアミン(ノルアドレナリンとアドレナリン)という化学伝達物質が、副交感神経からはアセチルコリンという化学伝達物質が分泌される。これらは、各臓器の細胞膜上にある受谷体に作用して、効果をあらわす。
・神経伝達物質
ニューロンの情報を化学的に伝えるため、シナプス間で放出される物質である。興奮性または抑制性の作用をもつ。
・カテコールアミン
交感神経の緊張が高まったときに放出される神経伝達物質の総称で、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンの3つが有名である。心拍数上昇、冠動脈拡張、毛細血管収縮、血圧上昇などの働きをする。
|
|
おもな神経伝達物質と作用
アセチルコリン 運動神経や自律神経、とくに副交感神経系のすべてのシナプスから放出。
運動時には骨格筋に向かう情報伝達物質として作用。
エンドルフィン 三大欲求が満たされたときに得られる快楽、麻酔、鎮痛作用を示し、
脳内モルヒネともいわれる。ランナーズハイと呼ばれるスポーツ時の
高揚感もこの作用による。
ドーパミン 興奮性で、運動調節、ホルモン調節、快楽や意欲などの情緒的反応に
関与する。
セロトニン 精神を安定させる鎮静作用があり、不足すると依存症やうつ病に
なりやすい。ノンレム睡眠を引き起こす作用もある。
ノルアドレナリン 交感神経のシナプスから放出され、神経を興奮させ、強いモチベーション
となって行動に駆り立てる。
③脳の仕組みと働き
脳は、大脳・脳幹・小脳から構成される臓器で、頭蓋骨におおわれている。約140億個の神経細胞からなり、重さは成人で約1300gとされる。
延髄の下にある中枢神経を脊髄といい、脳の延長に40~45cmの神経細胞の長い棒状の束として存在し、脳と身体の各部をつないで連絡する。これらの脳と脊髄を取り囲んで保護する膜を髄膜という。
・大脳(終脳)
頭蓋腔の約80%を占める、脳の中でもっとも大きく発達した部分で、間脳と中脳をおおっている。上部から見ると中央にある大脳縦裂という深いさけ目によって左右に分けられ(大脳半球)、左半球を左脳、右半球を右脳という。脳梁でつながっていて情報は行き来しているが、それぞれに機能が分担されていると考えられる。一般的に左脳は右半身の運動、視野的情報処理、論理的思考をつかさどり、右脳は左半身の運動、創造的活動、芸術的思考に関係しているとされる。また、大脳の外側を大脳皮質、内側を大脳髄質と呼ぶ。
・大脳皮質(灰白質)
大脳表面にあり、大脳髄質をおおう厚さ約2~5mmの部分で、神経細胞が集まって情報処理を行う。表面に溝としわがあって表面積を広くし、4つの大脳葉(前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉)に分類される。性質がよく似た神経細胞が層状に配列して、機能によって運動野・知覚野・視覚野・聴覚野・嗅覚野などに分けられる。
◆新皮質
高度な知能活動をいとなみ、言語・判断・創造・感情などの人間らしい理性をつかさどる部分である。発生的には新しく、人間や霊長類はとくに発達している部分で、人間の場合は皮質の90%以上を占める。
◆古皮質
怒りや快感、不安などの情動反応をつかさどる部分で、発生的には大脳旧皮質の次に古いとされる。
◆旧皮質
食欲や性欲などの本能をつかさどる部分で、大脳皮質のなかでは発生的にもっとも古いとされる。
・大脳髄質(白質)
大脳皮質におおわれた髄の部分で、神経線維が通り、大脳皮質で処理した情報をほかの部位に伝える。
・大脳基底核(大脳核)
大脳の中心部や間脳に神経細胞が集合した神経核で、おもに不随運動のコントロールを行っている。
◆大脳辺縁系
古皮質と旧皮質を合わせた部分のことで、本能行動や情動、古い記憶をつかさどる中枢である。
嗅球、嗅索、扁桃体、海馬などを含み、嗅覚との関係が深いことから嗅脳ともいわれる。
◇嗅球
大脳の前頭葉の下に球状に突き出した部分で、嗅神経からの電気信号を受け取る脳の一次中枢である。
◇嗅索
嗅神経が集まってできている軸索のことで、嗅覚は嗅球から嗅索を通じて嗅覚中枢へと達し、においが伝えられる。
◇扁桃体
快、不快の感情や、恐怖などの情動反応を起こす。
◇海馬
短期記憶の中枢である。
◆脳幹
脳の下部にあり、間脳・中脳・橋・延髄から構成され、多数の脳神経が出入りし、多種の神経核がある。身体の各部位から届く情報や大脳から出ていく情報が必ず通る箇所である。生命活動を直接支配する。
※アロマテラピーでは、脳幹に間脳が含まれると考えられている。
◇間脳
大脳と中脳の間にある脳で、視床と視床下部に大別される。
■視床
視床下部の上に位置し、末梢から伝達された感覚情報を大脳皮質へと伝達する中継地点であり、
フィルターの役割をする。
■視床下部
視床の下に位置し、自律神経系の最高中枢である。下垂体とも密接なかかわりがあり、一体化して機能する。また、恒常性維持の中枢的役割もあり、新陳代謝、体温、水分調節、消化、呼吸、性機能などを総合的に機能させている。
◇下垂体(脳下垂体)
視床下部の底部に付着し、内分泌系の中枢として各種ホルモン分泌量や分泌時期決定などの調節を行う。
◇中脳
間脳と橋を結ぶ、長さ1.5cmほどの脳で、身体の平衡や姿勢の保持、なめらかな動き、聴覚や視覚の反射に関する中枢などがある。
◇橋
大脳と脊髄を結ぶ感覚神経、運動神経の伝達路であり、大脳と小脳を連絡する中継点でもある。
◇延髄
脳の最下部の脊髄に続く位置にあり、循環や消化、呼吸運動などの基本的な生命活動の維持に欠かせない中枢がある。
◆小脳
大脳の下、橋の後方に位置する運動調節の中枢である。身体の平衡感覚を保ち、歩行や全身の協調運動を可能にする。
④身体を調節するしくみ
自律神経系への各器官への拮抗作用
|
器官 |
交感神経の作用 |
副交感神経の作用 |
|
|
循環器 |
血圧 |
上昇 |
下降 |
|
心拍 |
促進 |
抑制 |
|
|
末梢血管 |
収縮 |
拡張 |
|
|
消化器 |
睡液腺 |
少量の濃い液の分泌 |
多量の薄い液の分泌 |
|
消化液分泌 |
抑制 |
促進 |
|
|
消化管運動 |
抑制 |
促進 |
|
|
肝臓 |
グリコーゲン分解 |
グリコーゲン合成 |
|
|
内肛門括約筋 |
収縮 |
弛緩 |
|
|
呼吸器 |
気道(気管支) |
拡張 |
収縮 |
|
泌尿器 |
腎臓 |
レニン分泌 |
― |
|
膀胱 |
収縮筋の弛緩、 |
収縮筋の収縮、 |
|
|
その他 |
瞳孔 |
散大 |
縮小 |
|
甲状腺分泌 |
促進 |
抑制 |
|
|
副腎髄質 |
分泌増加 |
― |
|
|
立毛筋 |
立毛(鳥肌) |
― |
|
|
汗腺 |
分泌活動増加 |
― |
|