【免疫系】
Ⅳ.免疫系

①免疫系のしくみ

免疫は、異物や病原体など非自己を認識し、体内への侵入を防御し、排除する生体防御反応で、人間にもともと備わっているシステムである。免疫には、自然に獲得するものと、人工的に獲得するものがある。

◆自然免疫

人間に生まれつき自然に備わっている免疫で、皮膚や粘膜、体液などのほか、血中のマクロファージや好中球、NK細胞などの免疫細胞がある。

◆獲得免疫

自然免疫をくぐり抜けて侵入してきた異物を集中的に攻撃、排除しようとする働きで、人間にもともと備わっているものではなく、後天的に獲得される免疫である。敵の種類によって細胞性免疫と体液性免疫に大別される。

◆人工免疫

感染症予防などの目的で行われる方法で、ワクチンなどを接種して免疫機構をつくることである。

◆自然獲得免疫には、病後免疫とアレルギーがある。病後免疫は、病気とたたかったためにできる抗体で、1回できたら一生消えない免疫や、数年で消える免疫がある(アレルギーについては、次の項目で説明する)。自然獲得免疫を、病気の予防のために人工的に作り出すのがワクチン療法である。これは、無毒化もしくは弱毒化した病原体を用いて、病原体と同じでも感染力のない抗原を作り、体内に入れて抗体を作る方法である。血清療法は、免疫抗体を含む血清を患者に与えて治療する療法で、抗体を作る時間がないときなどに使う。毒蛇にかまれたときや破傷風にかかったときなどに用いられる。

ホメオスターシスの維持において、免疫系は警察と防衛の役割を果たし、この免疫系の主役は血液である。

 

②免疫系に関わる細胞と物質

◆白血球

免疫の主役である。白血球には顆粒球、単球、リンパ球があり、免疫の主役としてつねに体内を循環し、警備作制を敷いている。

さらにその中でも特に大きな役割を果たしているのが、リンパ球である。

血液は、酸素や栄養などを受け取って細胞に運んだり、いらなくなった老廃物や二酸化炭素などを運び去るという運搬の役割と、異物や細菌を処理して細胞を守る防御の役割を果たす。血液は、体重の約13分の1を占め、成人男子で約5リットルほどであるが、1分間で全身をめぐっている。つまり心臓は、1分間に5リットルの血液を押し出しているわけである。安静時の血液量の分布を臓器別に見ると、肝臓と消化管に20~25%、腎臓20%、骨格筋15~20%、脳13~15%、心臓4~5%、皮膚3~6%、骨や脂肪その他10~15%となる。血液は、全血液の約55%を占める血漿と、約45%を占める血球からなる。血漿の成分はリンパ液と類似しており、水分が約90%、タンパク質が7~8%、あとは糖質やミネラルで構成される。血球は赤血球、白血球、血小板に分類される。およその成分比は、赤血球500:白血球1:血小板25である。赤血球はヘモグロビン(血色素)という、鉄を含んだタンパク質をもっている。ヘモグロビンが赤いため、血液が赤く見える。ヘモグロビンは酸素を肺から各組織へ運び、二酸化炭素を回収する。白血球は、異物や病原体から生体を守るはたらきをもっている。血小板は血液凝固に関連する物質や酵素を含んでおり、血漿成分と協力して、血管が傷ついたとき血液が外に漏れ出さないように素早く傷口をふさぐ。

 

血球の生成系統略図

 

◆血球は骨髄で作られる

血球は、ほかの細胞と同様に一定期間で役割を終える。赤血球、白血球、血小板それぞれの新しい血球は、肋骨、大腿骨、脛骨、骨盤、椎骨、胸骨などの骨髄中にある未分化の幹細胞を由来として、血球芽細胞が分裂一分化して生まれる。

骨髄には赤色骨髄と黄色骨髄の2種類があり、血球を作るのは赤色骨髄で、黄色骨髄はほとんどが脂肪である。子どものときは赤色骨髄が多く、成人すると黄色骨髄になる。しかし成人でも事故などで血液が必要になると黄色骨髄が赤色骨髄に変わり、造血する。

◆造血幹細胞

各種血球のもとになる細胞で、未分化の状態(血球系細胞に分化可能)で骨髄に存在し、白血球、赤血球、血小板を生み出す。

◆顆粒球◆

顕粒球は、体内に侵入した病原微生物や異物を食べて消化する食作用や、殺菌作用をもっている。好塩基球、好酸球、好中球の3種があり、好塩基球と好酸球はアレルギーに関与し、白血球の約55%を占める好中球は生体内に侵人した細菌・異物を処理し、免疫活動に関与する。

◆単球

白血球の約5%を占める単球は、自血球の中で最も大きく、独特の運動性をもち、貪食能力が高い細胞です。大食細胞のマクロファージとして、食作用を行う。単球は存在部位によって名称が異なり、肝臓ではクッパー細胞、肺胞では肺胞マクロファージ、皮膚ではランゲルハンス細胞、骨では破骨細胞という。マクロファージは、食作用以外に、処理した異物の特徴をリンパ球のT細胞に伝える「抗原提示」のはたらきをする。

◆リンパ球

リンパ球は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞に分かれる。T細胞は、骨髄の幹細胞から出た白血球のもとになる細胞が胸腺で分裂・増殖・分化したもので、名前は胸腺(thymus)の頭文字のTに由来する。抗原に刺激された細胞はリンホカインを産生する。T細胞は免疫システムにとってはエリート的な存在で、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、サプレッサーT細胞に分かれる。B細胞はT細胞とは異なり、骨髄にとどまって分化したものです。名前は骨髄(bone marrow)の頭文字のB、あるいは鳥類特有の消化リンパ管であるファブリウス嚢(bursa of Fabricius)で発見されたために、この頭文字のBに由来する。T細胞の指令によって特定の抗体を作る。

ナチュラルキラー細胞は、リンパ球群の15%を占めており、免疫に大きく貢献している。

◆リンパ管とリンパ節

リンパ球は、血流とリンパ液の流れに乗って全身を流れ、いつも体内をパトロールしている。そして必要があると免疫反応に関与し、役割を果たす。血漿とリンパ液の成分は類似しているがリンパ液にはリンパ球が多く、タンパク質は少ないのが特徴です。リンパ液は、1日で約3リットルが体内を循環する。血液が1分で5リットル循環するのに比べると、大変緩やかです。リンパ液は、毛細リンパ管からリンパ小管へ、それからリンパ管へと、細い管から太い管へと流れ、最後は静脈に入る。右上半身からのリンパ液は右リンパ本管から右の静脈角(鎖骨下静脈と内頸静脈の合流点)に、それ以外の全身からのリンパ液は胸管から左の静脈角に入るのです。

リンパ管は静脈によく似た構造で、ところどころに弁があり、静脈血管と隣り合って流れることが多く、流れている途中で静脈と成分のやりとりを行う。リンパ管には血管における心臓のようなポンプがなく、筋肉の収縮によって循環する。

リンパ節は、リンパ管のところどころにあるあずきぐらいの大きさで、耳下、腋下、鼠径部などに特に集まっており、多数のリンパ球を駐在させている。リンパ節はリンパ液中の異物に対して免疫反応が行われる場所であり、リンパ液を濾過して、きれいになったリンパ液を血管に返す役割も果たしている。

〉〉〉免疫

免疫を、大原則として説明すれば、「自己」(自分であること)と「非自己」(自分でないこと)の区別であるといえる。自己に対して非自己が入ってくると抵抗すること、それが免疫である。そして、抗体を作って非自己(抗原)とたたかうことを抗原抗体反応という。病原体は人体に危害を与える非自己なので排除するようたたかい、移植された臓器に対してもいったんそれを非自己と認識すれば、排除するようにはたらく。

自己と非自己の認識こそ、免疫システムそのものである。しかし、がん細胞のように、自己でありながら危害を加える裏切り者もいるし、ウイルスに侵入された自己の細胞もあるわけで、自己と非自己を認識するのはそう簡単なことではない。そこで、自己と非自己の認識の高度な分析を行い、また、侵入した外敵の攻略法を解析するなどの高度な能力をもつ免疫細胞が必要になる。これがリンパ球のうちのT細胞である。

幼少期のようにまだ免疫機能が十分でない時期は、自己と非自己を認識することが非常に重要。そのため、T細胞を育てる胸腺は思春期ごろまで成長を続け、思春期のころ最も大きくなり、その後は縮小していく。高齢期に入ると萎縮して、機能を果たさなくなってくるが、これが高齢期に免疫機能が低下する原因の一つでもある。

◆免疫のシステム

私たちの身体を守る防御機構は、2段階用意されている。一般的な異物の侵入を阻止したり排除したりする非特異的防御機構(一般的防御機構)と、異物(抗原)を特異的に反応処理する特異的防御機構である。

非特異的防御機構の第一は、体外からの異物の侵入を防ぐことで、それを担うのが皮膚や粘膜による障壁防御である。皮膚や粘膜は異物の侵入を阻止し、細菌の増殖を抑えるが、それでも体内に異物が入った場合は炎症反応をおこして血管を拡張させ、白血球などが血管外に出てたたかう。まず感染後2時間くらいで好中球が増え、現場に直行して異物を摂食・消化するが、強力ではないので相打ちになったり負けたりすることも多い。死滅した好中球や異物、細胞の残骸が膿の成分になる。好中球では手に負えない場合、次に単球(マクロファージ)がやってきてたたかう。また、マクロファージは死滅した好中球なども貪食する。

 特異的防御機構は、異物が体内に侵入し、好中球や単球ではすまされなくなると作動する、リンパ球を中心とする免疫反応である。

 マクロファージは抗原を食べるが、それでも手に負えない場合、抗原の特徴をT細胞に示す(抗原提示)。T細胞は、リンホカインと呼ばれる生理活性物質を産出してマクロファージに渡し、食作用を活性化させて時間をかせぐ。マクロファージは、自らもモノカインと呼ばれる活性物質を産生する。このようにT細胞が産出するリンホカインと、マクロファージが産出するモノカインを、合わせてサイトカインという。これはガン治療やウイルス性疾患の治療に応用されている。

 T細胞は時間をかせいでいるあいだに、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞に分かれてチームを作る。

キラーT細胞(細胞傷害性T細胞)は、抗原を直接攻撃する。これを細胞性免疫という。

ヘルパーT細胞は、マクロファージからの抗原提示を受けてそれを解読分析し、その抗原をねらい打ちする特定の抗体を生産するための指令をB細胞に出す。

B細胞は、ヘルパーT細胞の指令に従って特定の抗体を多量に作る。このように抗体が主役となって異物を排除する免疫の仕組みを体液性免疫(液性免疫)という。B細胞は、1種類の抗原に対して1種類の抗体だけを作る。また、再び同じ抗原が侵入してきた場合に抗体を産生できるようにその抗原を記憶する。これを感作という。

B細胞はこのほかにも、マクロファージがうまく食べられない抗原の表面に付着して、食べやすいようにする。これを免疫食作用、またはオプソニン効果(作用)という。

サプレッサーT細胞は、抗体を作りすぎないように免疫機能を訓整する。

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、抗原を認識するための受容体をもっておらず、攻撃指令がなくても抗原を破壊し、非特異的防御機構を行う食細胞に類似している。非特異的防御機構と特異的防御機構の両方で活躍する。活性化されたナチュラルキラー細胞は、細菌やウイルスに感染した細胞、がん細胞などに対してすばらしいはたらきをする。ストレスが続くと活性化が抑えられるが、笑うことが活性化の大きな要因となる。

◆免疫器官

人間の免疫系に関わる器官で、骨髄、胸腺、皮膚、消化器、呼吸器、脾臓、リンパ節、扁桃などの組織、腸管のリンパ組織などが含まれる。

◆免疫細胞

免疫システムにかかわる細胞で、主体の白血球をはじめ、T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球などから構成されます。

◆マクロファージ

白血球の一種で、骨髄で単芽球から分化した単球は、組織内に入るとマクロファージに転化する。貪食細胞あるいは大食細胞といわれ、好中球に続いて体内に侵入した細菌やウイルス、死んだ細胞などを捕食・消化し、その異物情報をT細胞やB細胞に伝達する。この働きを「抗原提示」といいます。肺の肺胞マクロファージ、皮膚のランゲルハンス細胞、肝臓のクッパー細胞、骨の破骨細胞などがある。

◆オプソニン効果

B細胞が産生する抗体がマクロファージの食作用を助けるために体液成分を生成することをいう。免疫食作用とも呼ばれる。

◆非特異的免疫機構

一般的な異物の侵入に対して無差別に阻止・排除しようとする、初期段階での防御機構である。皮膚や粘膜による生体表面の障壁防御、好中球やマクロファージによる食作用などがある。

◆特異的免疫機構

異物を認識し、特異的に反応・処理する働きで、一度感染して回復したら同じ病原体には二度と感染しないという防御機構である。細胞性免疫と体液性免疫の2つがある。

◇細胞性免疫

T細胞が異物を直接排除する防御システムである。

◇体液性免疫

B細胞が形質細胞に分化し、特異的な抗体を産生して異物を処理する防御システムである。

◆抗原と抗体

生体内に侵入してくる病原体などの異物のことを抗原といい、それに対する抵抗物質を抗体という。抗体は「免疫グロブリン」と呼ばれるタンパク質で、Ig(アイジー)と略され、構造や機能の違いからIgA、IgG、IgM、IgD、IgEの5種類に分けられる。

◆抗体

抗体とは、病原体に対する抵抗物質で、免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質である。細菌やウイルスなどの抗原と結合し、その感染力を失わせる作用をもっている。免疫グロブリン(immunogloblin)はIgという記号で示され、G、A、M、D、Eの5種類がある。

◇免疫グロブリンG(IgG)

免疫グロブリンの75%を占めるもので、感染後3週間ぐらいから作られるため、抗原に対する即効性はありません。母体から胎盤を通じて胎児に移り、生後3か月くらいになるまで、子どもを抗原から守るはたらきもする。

◇免疫グロブリンA(IgA)

唾液、初乳などに含まれており、粘膜系の防御機能をもっている。

◇免疫グロブリンM(IgM)

感染後最も早く作られる抗体である。

◇免疫グロブリンD(IgD)

詳しい機能は解明されていないが、B細胞のはたらきを活発にする。

◇免疫グロブリンE(IgE)

アレルギー反応に関与する。

◆抗原抗体反応

生体内に異物が侵入するとB細胞はそれに対する抗体を産出し、抗体は抗原と特異的に結合し、さらには除去するが、抗体が対応する抗原と結合することを免疫反応では抗原抗体反応と呼ぶ。

◆免疫の異常

◇アレルギー(遅延型アレルギー)

身体を防御するために重要な免疫反応がある抗原に対して過剰になり、身体にとって不利益な状態を引き起こす。IgE抗体が関与していて、最初に産出された抗体が組織の肥満脂肪に結合し、再度アレルゲンが侵入するとヒスタミンなどが分泌されて周囲の組織を害す。アレルギーには、花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、アナフィラキシー反応などがある。アレルギーの原因となる物質をアレルゲンという。

抗原抗体反応がすぐにおきる急性のアレルギーの場合は、抗原が侵入するとマクロファージが取り込み、ヘルパーT細胞を介してB細胞から免疫グロブリンE(IgE)が産生され、肥満細胞の表面に結合する。抗原が肥満細胞上の抗体と結合すると、肥満細胞からヒスタミンが出て、ヒスタミンの作用によってむくみやかゆみ、血圧低下などがおきる。

◇アナフィラキシーショック(アナフィラキシー反応)

即時型アレルギーである。もっとも強いアレルギ一反応で、症状は急性で広範囲にわたる。アレルゲンに対してショック症状を起こし、呼吸困難や急性じん麻疹などの全身的症状が重症化して生命にかかわることも少なくない。たとえばハチに刺されたときに抗体ができるが、次に刺されたときに早く反応しすぎて(即時的に反応して)、呼吸困難などをおこして死亡するものである。ペニシリンショックなどもアナフィラキシーショックである。

◆自己免疫疾患

自己免疫疾患は、免疫システムが正常な自己に反応して引きおこされる。正常な状態ならば無視するはずの自己の組織や細胞に反応して、自己を非自己と間違えて攻撃してしまうのである。関与する抗体によって症状はさまざまで、慢性関節リューマチ、全身性エリテマトーデス、慢性甲状腺炎に代表される膠原病、橋本病などがある。

◆免疫不全

免疫不全というのは、免疫がうまくはたらかないことによって病気にかかりやすくなることである。代表的な例がエイズAIDS(後天性免疫不全症候群)である。これはエイズの病原ウイルスであるHIVヒト免疫不全ウイルスが免疫機構を破壊することによっておこる。

HIVは、ヘルパーT細胞に侵入してDNAを自分用に改造して増殖し、侵入したT細胞を破壊する。破壊されたヘルパーT制胞のかけらがほかのヘルパーT細胞に付着すると、キラーT細胞がそのヘルパーT細胞を異物とみなして攻撃する。エイズウイルスは、ヘルパーT細胞を乗っ取り、さらに免疫系の仕組みを破壊する。そのために免疫機構が正常にはたらかなくなり、ふだんなら防御できて発症しないような感染症が発症し、死亡する危険が高くなる。